Point of no return

さっきまでしんしんと降っていた雪は、気がつくと 
音も無く静かに降り注ぐ雨に変わっていた。
 朝、目が覚めたつもりがもう昼過ぎていて、
俺は昨日の出来事を布団から出ずに
幾度も幾度も思い出していた。
今まで何人かの女と付き合ってきたが
あんなふうに別れを切り出してきたのは
あいつが初めてだった。
ただ一言『体の調子が悪いから、別れて欲しい』
 俺自身、なんであの時素直にYESと言ったのか?
あっけに取られていたのか?
 そんなことより・・・本当にあいつが
好きだったのか? 好きで付き合っていたのか?
ソレすらも疑問だった。
あんなにすんなり別れられたんだから、
きっと一時的な気の迷いで付き合ったんだろう。
・・・そこまで考えて俺は急に可笑しくなって
布団を頭までかぶって苦笑した。
 そうなら、今までだってそうだったじゃないか。
女に振られて落ち込んだことなんてなかったじゃないか。
ソレを俺は今回に限って何を考え込んでるんだ?!
 そんな俺の一人芝居も階下からよぶおふくろの
がなり声に遮られ、俺はしぶしぶ布団からでて
バイトの支度をはじめた。
 今日は夜勤になるから、風呂でも入ってから
行こうと思ってたのに、ゴチャゴチャと
考え事をしていたせいで、着替えてそのまま
バイクにまたがった。
 折からの寒波でエンジンがなかなかかからない。
 学生の時の先輩のお古なんて買わなけりゃよかった。
こんなポンコツだったなんて思わなかった。
 それでも・・・・
あいつは喜んで後ろに乗ってたっけ。
あいつが「バイクに乗ってみたい」なんて言い
言い出さなければ、中古の安い車でも買うつもり
だったのに。
 あ・・・またあいつの事を考えてる。
 俺はまた可笑しくなって、半分笑った顔を
フルフェイスのヘルメットで隠した。
 白い排気を撒き散らして、俺のポンコツバイクは
冷たい空気を切り裂くようにスピードを
上げて走り出した。


 ★ つ ★ づ ★ く ★


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